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2018.06.14(木)大阪万博誘致 パリで最終プレゼン 山中教授スピーチ全文

2025年国際博覧会(万博)の誘致を目指し、13日に3カ国がパリで行った事実上最後となるプレゼンテーション。55年ぶりの大阪での万博実現を目指し、ノーベル賞受賞者の京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授も「生命の神秘」を巡るスピーチで大阪での開催に熱い思いを届けた。

議長、事務局長、各国代表、ご来賓、ご列席の皆さま、こんにちは、山中伸弥と申します。

大阪で、もう少し広く申します場合の関西で、わたくしは生まれ、そして育ちました。いまも暮らして、働いております。

そこで大阪・関西のことを、ひとつふたつ、申し上げましょう。

わたくしども、概して気取りがございません。地に、足をつけております。

だいたいいつも、クリエーティブでありたい、独創的でありたい、と。おもしろい人間でいたいものだとそう思っているところがありまして、ですから大阪・関西には、なんといっても漫才師がここに集中しております。それでいて、科学者も大勢いる中には、ノーベル賞受賞者も10人いる、と、そういう次第であります。

「イ・ノ・チ」。

わたくしども日本で「ライフ」のことを、そう呼びます。

イ・ノ・チは、つまり生命(ライフ)は、大切です。なぜといいますに、ひとたび失われますと、二度と再び生き返らないからであります。

それでは、イ・ノ・チをミクロのところで支えている、細胞はどうでしょう。

わたくしたちの体は、何百という、異なったタイプの細胞によってできています。皮膚細胞があれば、心筋細胞があり、脳細胞がある、といったぐあいです。

それら、細胞に関していうと、その運命は変えることができる。いや、若返らせることすらできるのであります。

2000年代半ば、わたくしたちは、まさしくこの驚異を発見しました。

ある日のことでした。皮膚から取り出した細胞が、トット、トット、拍動を始めていたのです。心筋細胞に、変化していたからでした。

この発見に、わたくしは言葉を失いました。イ・ノ・チの驚異に面したとき、ひとは、ただ謙虚となるほかありません。

けれども、この発見がやがてアルツハイマー、ガン、心臓病など、いろいろな病気の治療へとわたくしたちを導いてくれると気づいた刹那(せつな)、わたくしを身震いが襲ったのであります。

あれは、はるかな昔、私は、ああ、そうかと思ったことがあります。

科学なんだ、と。

驚異の世界、イ・ノ・チの果てない神秘の扉を、いつか開いてくれる鍵。それは、科学に違いない、と。

ひらめきが私を襲った。それはいったい、いつのことだったか。自分に尋ねてみて、いまはっきりわかるのです。

それは、ある夏の暑い日のことです。わたくしは、1970年大阪万博の会場におりました。

わたくしを囲んでいたのは、あふれんばかりに、科学の達成でした。

8歳の子どもにとって、なんと抗(あらが)いがたい、魅力に満ちていたことでしょうか。印象は、わたくしにおいて、長く残ることとなったのでありました。

ご列席の皆さま、ひとつの誓いを結ぼうとして、わたくしここに、立っております。

いま与えられた鍵、発見によって得られた鍵をもちいまして、大阪・関西の地に深く根差した医学の伝統に支えられつつ、わたくしは、癒やしがたきを癒やすべく、なお一層の精進をいたします。

ご列席の皆さま、いまひとつ、誓いをなそうと、わたくしここに立っております。

その誓いとは、2025大阪・関西万博のため、それを偉大な実験室とするために、どんなことでも、やれることはなんでもやるという誓いです。

それは、イ・ノ・チの美に光を当てるラボラトリー。世界のあらゆる場所からやってくる未来の科学者たちを、魅了してやまない、驚きの実験室となるのです。

48年前のわたくしにとって、まさしくそうだったように。

ありがとうございました。

(経済産業省ホームページより)

<毎日新聞>
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